薄煕来・商務部長に高まる期待[経済]

国内外の通商管理を管轄する商務部の新部長に、薄煕来・前遼寧省長が抜擢された。胡錦濤国家主席、温家宝首相に次ぐ世代のホープと目される若手実力派の全国デビューに、メディアも連日異例の特集を組むなど注目が集まっている。大連市長時代から外資との関係作りに定評のある薄氏だが、商務部長としては輸出鈍化や外資導入の減速といった問題に直面することが予想され、その手腕が問われる。
薄煕来氏をよく知る大連の日系企業経営者は「大連の投資環境を大きく改善したのは間違いなく薄市長」「外資を重視し、外国人との交流も上手」と、その実績を高く評価する。人柄についても「気さくでユーモアがある」「明るくまじめ」「青年実業家のよう」と好評だ。
1993年に大連市長に就任した薄氏は、天然の良港と軽工業を除き特徴のなかった大連を一変させた。「北の香港」を目指すというスローガンのもと、ソフト、ハードの両面から外資の投資環境を整備。公園や緑地を増やし、何もなかった海岸に観光客の集まるリゾート地を生み出した。大連の地価は10年間で10倍に上がり、外資導入は遼寧省全体の半分以上を占めるまでに増加。都市競争力の評価も年々上昇していった。2001年に遼寧省長になってからは、省レベルで大連モデルの導入に努めた。
商務部長への抜擢は、前任の呂福源氏が入院したことによる緊急の人事ではあったが、こうした地方行政での手腕が買われたことも間違いない。

■中国メディアが異例の報道
薄商務部長の誕生のニュースは、正式任命の2週間前に早くもメディアを駆け巡った。その後は連日のように特集が組まれ、部長級の人事としては異例とも言えるフィーバーぶりを見せている。
1949年生まれの薄氏は今年55歳。中国共産党の長老で元副首相の薄一波氏を父に持つ「血統」、甘いマスク、実力を兼ね備え、次世代のホープの1人と目される。
こうした背景に加え、ユーモアを交えながら率直で絶妙な言葉を選ぶ語り口も人気の理由だ。マスコミの影響力をよく知る薄氏は、メディアと良好な関係を維持しており、それを仕事に利用する。大連時代は「大連の名刺」と呼ばれるほど、さまざまな場面で大連を宣伝して回った。

■「要求厳しい」、批判の声も
外資企業や一般市民に人気の高い薄氏だが、仕事への要求が厳しいため、身内からは不評を買うこともあるようだ。大連市長時代には「政府幹部は夜11時前に携帯電話の電源を切ってはいけない」との規則を導入。夜中にたびたび電話で呼び出し、幹部たちを慌てさせた。
環境緑化を推進した際は、「公務員の給料を犠牲にしてイメージ作りに金をかけている」「木を植えず草を植えるのは、目先の業績だけにこだわっている証拠だ」との反発があったという。「パフォーマンスは得意だが専門的な理論がない」との声もつきまとっているようだ。
こうした批判を、大連と遼寧では外資導入という実績で跳ね返してきた薄氏。商務部長としては新たな難題が待っている。
中国の外資導入は昨年、実行ベースで前年比1.44%増にとどまるなど急成長に陰りが見え始めている。貿易面でも、増値税の還付率引き下げなどにより輸出の伸びが鈍化し、輸入拡大方針もあって、1月は早くも2,000万米ドルの貿易赤字となった。昨年3月に複数の部門を再編して新設された商務部を、一つにまとめあげていく仕事もある。
地方行政で培った経験を中央でいかに発揮するか、今後のかじ取りに注目だ。

薄煕来氏の略歴
1949年生まれ、山西省籍。1980年・中国共産党入党。
1977年・北京大学歴史系入学、世界史専攻。82年・中国社会科学院研究生院(大学院)卒業。修士。
82年から2年間、中央書記処研究室、中央弁公庁で働いた後、84年からは一貫して遼寧省の役職を歴任。93年から大連市長、2001年から遼寧省長を務めた。

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